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眼鏡ライター・今絵うるはが語る

意外と知らないレンズの話 ~レンズは、眼鏡に欠かすことのできない重要パーツ~

眼鏡を語る上で、欠かすことのできない重要なパーツ「レンズ」。
ついフレーム先行で眼鏡を選びがちですが、
視力を矯正する役目を果たすのはレンズです。
こちらのコーナーでは、眼鏡ライターの今絵うるはさんが、
レンズの基礎知識はもちろん、あなたにぴったり合う
レンズの選び方をレクチャーしてくれます。

日本のメガネレンズは世界トップクラスあまり知られてないのは、勿体ない

メガネは、フレームとレンズを組み合わせてつくるものです。ファッションアイテムやパーソナルアイコンとしての存在感を左右するのは、主にフレーム。視力矯正やいま話題のブルーライトカット(PCレンズ)などの機能をプラスする役割を果たすのがレンズです。

透明なプラスチックやガラスでできているレンズには、メーカーや製品名、視力矯正のための度数などを明記できないこともあり、意外とよく分からないという方が多いのではないかと思います。しかし、レンズを知ることでメガネ選びがより納得できるものになったり、カスタマイズ感覚で機能をプラスすることで想像以上に快適になったりするのです。

さらに、レンズを知ることは、眼鏡店のスタッフが顧客に向き合う姿勢を読み解くチカラにも繋がります。ただ「見えるようになる」だけではなく「快適に見える」ようにするために、なにが必要なのか。購入する商品が、あなたに適している理由を納得できるように説明してくれるかどうか。それらを判断する尺度を持つことができるようになります。

また日本は、メガネレンズの分野においても恵まれた環境にあります。たとえば、世界中の水族館で使われている水槽のガラスが日本製であるように、レンズの素材として使われるプラスチック素材も日本のメーカーが世界シェア95%以上を占めています。日本のレンズメーカーには、世界トップクラスの大手から優れた中小メーカーまでが顔を揃え、高いクオリティを誇る製品が数多くつくられているのです。

しかし日本では、こんなにも世界トップクラスの条件が揃いながらも、メガネレンズについて、まだあまり知られていません。これはとても勿体ないことです。

現在、発売されているレンズは数百種類にも及びますが、コーティングやカラーを組み合わせて考えれば、さらにその数は膨大な量になります。これだけ沢山の製品に恵まれているのですから、楽しまなきゃ損!というもの。

レンズの世界を知ることで、メガネ選びはもっと楽しく、より良いものになるはずです。それでは、レンズ選びのポイントをいくつかご紹介していきましょう。

レンズに様々な機能を施すことでコストパフォーマンスが高い眼鏡に

視力矯正もメガネレンズの機能のひとつですが、このほかにもコーティングやカラーを使ったり、レンズ本体に仕掛けを施すことによって、様々な機能を持たせることができます。

たとえば最近話題のPCメガネは、レンズにブルーライトカット機能をもたせたもの。コーティングによってカットしたり、レンズカラーの染色技術を応用することでカットしたりと、その手法は製品によって様々です。そもそもブルーライトは、紫外線に近い波長を持つエネルギーの強い光。バックライトにLEDを使用したテレビやゲーム、パソコンなどの画面やLED電球からも発せられています。つまり、現代社会は目が疲れやすい環境にあるのです。眼の負担になって疲れやすいだけでなく、ブルーライトによって引き起こされる睡眠の質や生体リズム、睡眠中に分泌されるホルモンへの影響なども心配されます。

こうしたブルーライトカット機能以外にも、紫外線をカットしてくれるUVカット機能、満員電車やラーメンを食べるときなどの場面でありがちなレンズの曇りを抑えてくれる防曇機能や、傷や熱、汚れからレンズを守る機能、帯電、撥水などの機能をつけることもできます。

他にも、ブラインドのように一定方向の光を抑えることで見えやすくする偏光機能や、光量や紫外線量によってレンズ自体のカラーが薄く濃く変化する調光機能、ブルーライトカットとは少し違う方法でOA環境をラクにしてくれる機能などなど、プラスすることでグッと快適になる機能がたくさんあるのです。最近では、花粉を跳ね返す仕掛けを持った鼻パッドも登場しているんですよ。

ほとんどのレンズメーカーから、プレミアムコーティングなどといわれる複数の機能を併せ持ったコーティングが発売されています。個々のコーティングをバラバラに選んで組み合わせるよりもコストパフォーマンスが良くオトクなのでオススメです。

また、遠近両用レンズなどの複数の焦点をもつ設計も機能のひとつですね。近くを見たり、遠くを見たりすることは、近くを見る度数と遠くを見る度数、少なくとも2つの度数が1枚のレンズの中にあるため、それぞれの焦点をスムーズに視点が移動しながら快適に見ることができる設計が必要になるわけです。

最近では遠近両用などの多焦点レンズは、老眼世代だけのものではなくなってきています。たとえば、集中して近くをみる時間が長く目が疲れやすい受験生用のレンズは、遠近両用の設計を応用して生まれた製品です。老眼には早いけれど最近とても眼が疲れるといった方にもオススメできるレンズですよ。

まずは、メガネにどんな機能を持たせたいと思っているかを、眼鏡店のスタッフさんにお話してみることが大切です。

あなたに合ったレンズを見つけるには眼鏡店のスタッフとのコミュニケーションが大切

メガネレンズを選ぶとき、厚みが気になるという方は多いかもしれませんね。
度数と厚みは相関関係にありますが、大きなカギを握るのは屈折率です。基本的には屈折率の数値が大きくなるほど、レンズは薄くなります。また、球面設計と非球面設計や両面非球面設計がありますが、非球面設計はよりフラットに近づくように設計されたレンズです。

凹レンズは遠くを見るためのマイナスレンズで、レンズの中心部に向かって薄くなっていきます。凸レンズは近くを見るためのプラスレンズで、レンズの中心部に向かって厚くなっていきます。厚くなるほど視界の歪みが生じやすくなるため、フラットに近づけることで歪みを生じにくく、レンズの厚みを薄くする効果があります。

メガネとして加工され、仕上がった状態のレンズの厚みは、フレームのサイズや形状によって変わります。また、アッベ数などの数値も関係しますが、そのあたりの難しいことは専門家である眼鏡店のスタッフさんに聞きましょう。屈折率とレンズの厚みの関係も、ある程度の知識と経験のある眼鏡店のスタッフさんなら理解していますから、ご自身の度数に対して適した屈折率が大体どの範囲なのかを聞いてみることをオススメします。

また、メガネをつくるときに多くの方が必要となるのが「度数」ですね。度数が0.00なら度なしのダテ眼鏡です。近視(-)や遠視(+)に関わらず、度数の数値が大きいほどレンズは厚くなります。
意外に思われるかもしれませんが、度数にコレ!という正解はありません。最近では機械の進化によって、ある程度のマニュアルに沿った知識があれば、機械を操作することで視力測定ができるようになりました。これが「見える度数」です。偶然その度数が、その人にとっての快適な度数となることも勿論あります。しかし大体の場合、それ以上の「快適に見える度数」を導き出すためには、より深い専門知識や経験、ユーザーと眼鏡店のスタッフさんによるコミュニケーションが必要です。

あなたに合ったレンズを見つけるためには、眼鏡店のスタッフさんとのコミュニケーションが大切なのです。なぜなら、部屋の広さ、テレビまでの距離、デスクワークの時間の長さなどの小さな情報によっても、焦点をあわせるべき距離や持っておきたい機能が違ってくるからです。メガネをつくるための情報が多いほど「快適に見えるメガネ」は作り易くなるのです。

レンズ袋やクオリティカードなど安心できるサービスも

これまでは、自分の購入したレンズについて、あまりよく分からないという方が多かったかもしれません。

しかし現在では、一部の特注レンズに、クオリティカードや品質保証カードなどといった製品情報がわかるカードを付けているメーカーもあります。現在、HOYAビジョンケアグループ、セイコーオプティカルプロダクツ、ニコン・エシロール、東海光学の4社で実施され、カード式やシール、紙製など、その形式は様々です。製品IDをはじめ、レンズの製品名やコーティング、累進レンズの場合には近くを見るための度数領域である累進帯の長さのタイプなども記載されていたりします。度数などの詳しい情報が記載されないこともあるようですが、メーカー側で度数から購入したショップまできちんと把握した上で保証してくれるのですから、消費者としてはとても安心できますね。

最近ではメーカーによる取り組みだけでなく、眼鏡店で購入したメガネを受け取る際に「レンズ袋」を渡すケースも増えています。レンズ袋は、レンズメーカーから眼鏡店へレンズが入荷する際に封入されている袋のことです。メーカー名は勿論、レンズの製品名や度数などが記載されているため、自分がどんなレンズを購入したのかが一目瞭然。これも安心できるサービスですね。

メガネを選ぶとき、特にレンズについては知らないことが多く、自分で選ぶ感覚で決めるのは難しいかもしれません。しかし、自分がメガネにどんな機能を求めるのかを気兼ねなく相談したり、快適だと感じられる度数を見つけられることで、メガネはどんどんあなただけのものになっていきます。レンズを知ることで、メガネを快適な自分仕様に近づけることができるようになるのです。

メガネを選ぶときには、ぜひ眼鏡店のスタッフさんにあなたのことをたくさん話してみてください。そして、それに応えてくれる眼鏡屋さんを見つけてください。そうすればきっと、あなたにピッタリなレンズに出会えるはずです。

著者プロフィール

今絵うるは

今絵うるは 【いまえ・うるは】

5年間の眼鏡店勤務、立ち上げから参加したメガネ専門誌の編集者としての知識と経験を活かし、眼鏡に関する執筆活動を行う“元祖”眼鏡ライター。眼鏡専門誌のほか、ライフスタイル誌やファッション誌での執筆も行い、様々な分野で活躍中。秋田在住。

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