
低価格を武器に認知度を高めている、プライス系と呼ばれる眼鏡量販店。
高級品と呼ばれていた頃から眼鏡を愛用する人たちにとっては、安物のフレームに手を出すのはプライドが許さない…という心境もあるでしょう。しかし、どうしてもレンズ代が高くつく場合、そうも言ってられませんよね。
そこで、ここではプライス系が儲かる仕組みを解説しつつ、財布もプライドも満足できる眼鏡の選び方を解説していきます。
JINS(ジンズ)やZoff(ゾフ)など、プライス系の眼鏡店が躍進できた理由として様々なメディアでも紹介されている「SPA方式」。商品生産を外注することなく、設計・生産・販売までを一括管理する手法です。
自社で開発したオリジナル商品を、中国や韓国のメーカーに大量発注することで製造コストを抑えているのは有名な話。さらに、フレームに使用される材料を安い素材にすることで1本あたりの価格を抑え、低価格化を実現しています。
いま、いちばん安いフレーム素材といわれているのが「TR」。JINSが採用したことで、多くの眼鏡店も使うようになっています。「TR」は医療用に使用されていた樹脂で、それまでフレームの素材として使用されたことはありませんでした。
その特長は、高強度と軽量であることに加え、弾力性に富み、掛け心地が良いこと。思いきり曲げても壊れにくいという性質もあります。その一方で、折れてしまうと修理は不可能で、壊れたら終わりとなるフレーム素材。外国製であれば、原価はフレーム素材の中でも、もっとも安くなります。
このJINSの例で分かるように、眼鏡の低価格化には、フレーム素材の価格が大きく関係しています。
ここで、眼鏡フレームの素材を原価が安い順に紹介しましょう。フレーム素材の特性と原価の安さを把握することで、よりコストパフォーマンスの良い眼鏡選びが可能になります。
順位 | 素材名 | 特徴 |
---|---|---|
1 | TR(樹脂系) | ポリアミド系樹脂からできている素材。フロントに使用されたフレームは調整不可。 |
2 | アセテート(プラスチック系) | 天然セルロースが原料。セルロイドより軽く、燃えにくいのが特徴。セルロイドに代わり最も多く使用されている。 |
3 | ウルテム(樹脂系) | 耐熱性が高く、ドライヤーの熱などで変形しにくい。宇宙船の部品などにも使われる特殊プラスチック。 |
4 | ニッケル合金(メタル系) | 他の金属に比べサビにくく、加工性に優れている。比重があるため重い。アレルギーの原因となりやすい。 |
5 | ステンレス(メタル系) | 弾力性、耐食性に優れている。合金と比べ、軽量だが、チタン系合金と比べると同体積で1.5倍となる。 |
6 | セルロイド(プラスチック系) | 独特のツヤ感と弾力性があり、かつては多く使用されていた。燃えやすく、170度以上で発火。紫外線により変色することも。 |
7 | チタン(メタル系) | 鉄に比べ、2倍の強度を持ちながら重さは鉄の1/2。アレルギーフリーで耐食性に優れているため、近年のメタルフレームの主流に。 |
8 | NT合金(メタル系) | ニッケルとチタンの合金。変形や衝撃に強い。形状を記憶するため、一定の温度内であれば元の状態に戻る。 |
9 | βチタン(メタル系) | 純チタンに比べ2倍以上の強度があり、優れた弾力性を持っている。 |
10 | アルミ・マグネシウム(メタル系) | チタン合金に比べると48%の軽量化を実現。伸びがないので、必要以上に曲げると折れる。 |
11 | エクセレンスチタン(メタル系) | 大手フレームメーカー「シャルマン」が東北大学と8年間に渡り開発した新素材。同素材を使用した商品は高価格帯ながら大ヒット。 |
12 | 木(竹) | 独特の質感、経年変化を楽しむ嗜好性の高い素材。加工が難しく、調整ができないため一部の愛好家向き。 |
13 | バッファローホーン | 希少価値が高い、可塑性も弾力性も少ない。動物性のため肌になじみやすい。 |
14 | べっ甲 | 天然素材でアレルギーもほとんど起きない、希少価値が高い素材。壊れても修理可能で長く愛用できる素材。 |
15 | 金(メタル系) | 腐食に強く、永久に変色しない。壊れても修理できるため、永く愛用できる素材。金属アレルギーも起きにくい。 |
※使用状況、頻度、環境により大きく異なり、個体差もあります。
こう眺めてみると、原価の高い素材はそれだけ機能性、質感に優れ耐用年数も長くなります。レンズ代が、どうしても高くなってしまう、という人は、フレーム素材の価格を抑えることで予算内に収めることが可能になるかもしれません。
ただ、素材から選ぼうとすると、店頭に並んでいるフレームに素材名まで明記している商品は少ないので、自力で探すとなると労力がかかります。ここは、単刀直入に「このフレーム素材に、レンズはこれ!」といった相談ができる店舗スタッフや、商品知識のある頼れる店員のいるショップに足を運ぶのが近道でしょう。
とはいえ、中国や韓国で作られた格安メガネのフレームは、一度国産フレームを掛けてみるとわかりますが、掛け心地と顔への馴染み具合が明らかに違います。
国産フレームは、同じプラスチック系の素材でも、中国製に比べ軟らかく粘りがあります。また、いかに顔にフィットするか?を考えた設計力も格段に違います。 長く使うことを考えると、格安フレームの眼鏡を何本も買い替えるよりも安く済む場合もあります。
ここで、各眼鏡チェーン店の国産メガネ取り扱い比率を調べたので掲載します。
順位 | 眼鏡店名 | 国産メガネ取扱い比率 |
---|---|---|
1 | パリミキ | 55% |
2 | メガネドラッグ | 50% |
3 | メガネストアー | 45% |
4 | 眼鏡市場 | 40% |
5 | ビジョンメガネ | 35% |
6 | メガネの愛眼 | 30% |
7 | メガネスーパー | 20% |
8 | JINS | 10% |
9 | Zoff | 0% |
実は、海外の有名ブランド「BARTON PERREIRA(バートンペレイラ)」のように、フレームからレンズ、パーツの全てが日本製という眼鏡もあります。上質で優れた眼鏡を作りたい、と選んだのが日本の高い技術力だったそうです。また、レンズにおいても日本製は世界が認める品質を誇っています。
価格を抑えたい人こそ、国産にこだわることで財布もプライドも満足する、コストパフォーマンスの良い眼鏡と出合えるのではないでしょうか。